天と天使と随真神 1

2016.03.21 Monday

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    宇宙の彼方
    天空の最上階の更に上層階
    深宇宙の奥深く
    宇宙の中心の更に中心にその聖域は存在している。



    そこは見えない世界。
    全てがあって全てがない世界。
    天使や使徒と呼ばれている天の使いにも見えない。
    神に属する大きな存在も、そこには行けない。




    そこは既に未知の世界。
    宇宙の銀河の星々が生まれる場所。
    全ての存在が生まれ、そして無くなる場所。
    そしてまた生まれる。
    全てが形成される次元。

    神の中の神だけがそこに行ける。

    神の中の神とは?
    それは、、、この世には敬称する言葉がない存在である。

    大きな存在。とでもいうしかない。



    永遠と続く漆黒の宇宙の闇の中に光が生まれる。
    星が生まれる瞬間は、只ひたすらに美しい。
    閃光が放たれ、優越とした波紋が広がる。
    恐ろしいほどの圧倒的な力と波動。
    その波紋が重力波となって全宇宙へと広がっていく。
    その工程で様々な存在も生まれる。
    神もその一つであった。
    小さな、大きな星が集まって銀河となり、天の川となり、天空となり、天の国となる。
    一つの宇宙となる。
    天の国から「無であり有である」宇宙の中心の中を見ることはできない。
    しかし宇宙の中心からは一瞬にしてすべての時空・次元、存在を見ることができる。
    宇宙の中心の大いなるおおきな存在、創造主はいつでも自由にそこを見ることができる。





    幾万年。
    美しい星が奇跡的に生まれた。
    蒼い閃光を放つ星である。
    蒼い閃光で宇宙を照らした。
    偶然できた星だった。
    大いなる大きな存在である創造主は、それをとても愛でた。


    大いなる懐に抱き、暫く時が過ぎるのをまった。
    大地と山々でできた星である。
    まだ霧に隠されているその星を、星を作った大いなる大きな存在は初めて「嬉しい」と思った。
    嬉しいとはこうゆうことか、と思った。


    手の中にある青い星を、大いなる大きな存在は「青い星」と呼んだ。
    青い星はまるで答えるように青く光った。
    蒼い星は、まだ幾重もの大気が交じり合い、その世界は混沌としている。
    星の中心が燃えていた。
    その火を噴く山々。
    轟轟と音がして星自体が揺れていた。
    なんと巨大な波動を見せる星であろうか。
    星自体が急速に成長していた。
    こんな星は初めてだと大いなる大きな存在は笑った。
    潜在能力を秘めている星、青い星。
    大いなる大きな存在は、そこに「水」を混ぜた。
    水はその星の大部分を飲み込んだ。


    青い星の成長は続いた。
    永遠の時に思えた。
    そうしてやっとその星は波動が鎮まると、
    大いなる大きな存在はまだ何も存在していない漆黒の闇の世界である一つの宇宙に青い星をそっとを置いた。
    置いた瞬間、全宙に波紋が広がった。
    まるで柔らかな布の上に一つの小さな石を転がしたように波紋が幾重にも伝わる。
    その波は永遠に続いていく。


    そうだ。

    青い星よ。
    お前の傍には大きな燃える星を一つ、作ってやろう。
    その火が枯れぬように。
    その潜在意識に相応しい星になるように。

    火も日も必要だ。
    しかしその火を遮る星があれば更に面白い。
    熱い水は次第に鎮まり、涼やかな水になろう。
    日陰もできよう。
    この青い星の周りには多くの星々を廻せよう。
    蒼い星が美しく大いなる星として存在できるように、宇宙をそっくり作り替えよう。
    蒼い星を中心に、円を描き宇宙の理とする。
    陰と陽を授けよう。
    その中で命が生まれ、そして亡くなる。
    そこに生きるものは絶えず進化する。

    その進化の過程が面白かろう。
    面白かろう。


    大いなる大きな存在はそう思った。



    幾千年、ときが過ぎた。
    蒼い星には様々な生き物が誕生していた。
    全ては青いい星の潜在能力の成せる技だった。
    そしてその蒼い星の置かれた環境が、命を揺り動かした。


    目覚めよ、目覚めよ。
    命よ目覚めよ。

    ここは守られし蒼い星。
    大いなる大きな存在に深く愛でられし奇跡の星。

    目覚めよ目覚めよ。
    この蒼い星に集え。


    正も悪も。
    理も不条理も。
    混沌としたこの霧の中から生まれし全てのものは、大いなる大きな存在の賜物ぞ。
    目覚めよ目覚めよ。

    その蒼い星からの魂の声に最後に大地から魂を芽吹かせたのは、人であった。




    深く慈しむ青い波。
    その波がこの星に生きるべき生き物を作っていった。
    その光景は幾千の光の洪水。
    その光の如く生まれては亡くなる様を、大いなる大きな存在はただ見ていた。
    幾千年、その繰り返しを見ていた。
    そうしている内に、大いなる大きな存在は、眠りについてしまった。
    深く長い眠りから目覚めたとき、蒼い星のことは忘れていた。




    「天よ」

    眠りから覚めた大いなる大きな存在に、最初にお声をかけたのは「随真神」(ずいししん)と、呼ばれる神だけであった。
    神の中の神である「随真神」(ずいししん)だけがここにいられる唯一の大きさを持つ。
    巨大な宇宙の中にあっても自分の意識を持つことができる存在である。
    宇宙の広大な多次元空間の中でもこうして存在できる神は、そうはいない。


    「御寝覚めですか?天よ」


    大いなる大きな存在は、天と呼ばれていた。
    「天」と呼ばれている大きな大いなるその存在は、宇宙の中でその形を作るのが難しかった。
    あまりのも存在が大きすぎるのだ。
    宇宙よりも更に大きく、どこまでがその存在なのか、わからない。
    宇宙すべてが「天」であった。
    天は目覚めると、光輝く星を集め、銀河を集め、自分の形をとりあえず作った。
    金・銀・桃・朱・蒼・碧の閃光を放つ星で一つの点を作った。
    点は観る角度によって、放つ色が変わる。

    「眠っていた?」

    黄金色にきらめく点の言葉は、響きであった。

    「暫くの間、、」

    「暫くとは?」

    「束の間です」

    「何か変わった?」

    点は、いつか天界でみたことがある、羽を持った美しい天使の姿に形を変えた。
    金銀色の天使は、大きく宇宙の中で羽を広げた。
    見渡す限りの宇宙を覆うほどの天使の羽は、星の煌めきでできていた。
    美しく燃え盛る黄金の羽。銀糸の羽。所々に桃と朱と蒼く眩しい光が見れる。
    全宇宙がその巨大な羽に包まれてしまう。

    「特にありません」

    「そう」

    「天?!」

    そう呼ばれた大いなる大きな存在は、突然、天使の姿のまま大宇宙を移動した。

    下層へ下層へ。

    黄金色と銀色の天使は下層へ下がるほどに益々美しい光を放っている。
    そして恐ろしいほどに巨大であった大きさが少しずつ小さくなっていく。
    下層の次元へ移動する時は本来の大きさのままでは移動できない。
    天の存在が全てを飲み込んでしまうからだ。
    だから天使の姿の天は、下層の次元に下りるほどに自分の存在を小さくしていった。

    「天よ、どちらへ?」

    随真神(ずいししん)の光の集団が天使に姿を変えた天の後を追った。
    天は目覚めて直ぐに、微細な波動の揺れを感じていた。
    何処かで、何処かの宇宙で、重力の波動を揺るがす何かが起こっている。

    下層の次元へ降りていく。
    下層へ、、更に下層の世界へ。
    波紋の揺れの元を辿るように天は降りていった。
    次元を幾つも跨ぎ、一つの宇宙についた。
    今まで降り立ったことのない宇宙である。
    その宇宙では、星同士が激しくぶつかり合い、星が粉々に砕け、
    その星の破片が辺りの惑星や銀河にぶつかり、そこでは散らばるような火花が宇宙に散っていた。
    天が作った理の中で、円を描くように回転しているはずの星々の姿がない。

    「ここか、波の乱れは、、、」

    眠りから起きた天は、機嫌が悪い。
    微細な波紋、波長・波動の乱れも許さない。

    「これは!?」

    驚いたのは随真神たちだった。
    宇宙の果ての他の宇宙であったとしても、天が眠っている間にこんな破壊行為が行われていようとは。
    ことになっていようとは?!
    宇宙の外れ、他の宇宙空間。
    しかも普段は決して行かない下層の下層の次元ではあるが、
    随真神たちの誰一人としてその変異に気づかなったことに、深い恥ずかしさと抑えようのない憤りを感じた。
    随真神たちは自らも天使の姿になり、一斉にその宇宙空間へ散った。

    天がお作りになった理を破壊している。
    こんなことは許されない。
    恐ろしい。
    畏怖の思いが随真神だちの胸をよぎる。
    一人の随真神がその思いを抱くとすべての随真神にその思いが伝わる。

    恐ろしい。

    天の造った世界を破壊するなど。
    なんと恐ろしい。
    随真神たちは、なぜそのようなことになっているのか。
    天と同じ天使の姿になった随真神たちは情報を集めた。


    「何をしている?」

    天使の形をしている大いなる大きな存在は、随真神に聞いた。
    その音は辺り一面の宇宙へ波のように響いた。
    星々を粉々に粉砕していた存在が、その音に気付き、破壊をやめる。
    それは、その宇宙の中の最初の神々の戦いだった。
    ゼウス・ハデス・そしてポセイドンの3神が、自分たちを作った神クロノスと宇宙を舞台に戦っている最中であった。
    巨大な美しい銀河を巻き込み、星を砕き、ビックバンを起こさせている。
    それは宇宙の理を乱すほどの勢いである。
    まさに戦いをしていた神々は、大いなる大きな存在の波動に気付き、その大きさに一瞬、我を忘れた。
    劣勢だったクロノスは、身が竦むの感じた。


    「そなたらは、なんだ?」

    と、天は音を放った。
    その音は言葉となり衝撃波となって神々のエネルギー体を木っ端みじんに消していく。
    砕けて散るのではなく、エネルギーが消えていくのだ。
    自分のエネルギー体が、たったその一言で見事に消え去っていく様を見て、四神は思わず宇宙の中でひれ伏した。

    目の前にはとても小さな天使がいるだけだが、その陰の巨大さに圧倒される。
    目がくらむほどである。
    その存在の圧力に、大きさに、全能の神であるゼウスでさえ自分の存在を保つのが精いっぱいだった。
    エネルギーが消えかけている。

    「我(われ)が創造した世界をよくも、、、、」

    天が怒った。
    その怒りが刃となって四神のエネルギーを更に削ぎ落とし、消し去っていく。
    そこに随真神たちが星で集めた天使の姿でやってきた。
    次々と姿を現していく。
    幾千もの天使が並んだ。

    「これにはそれなりの訳があるようです」

    「訳?訳とはなんだ?」

    随真神たちは、それぞれが集めてきた情報を整理した。

    「天が眠りにつく前、愛でていらした蒼い星を覚えていますか?」

    「蒼い星?」

    と、金と銀の光を放つ天使の姿の天は、深くて長い眠りにつく前の記憶を辿った。
    そして思い出した。

    「おお、あの星のことか、蒼い美しい星。潜在能力を秘めた特別な蒼い星」

    「はい。ひと際美しい、あの蒼い星でございます」

    「あの星は、今、どこにある?」

    天が随真神たちに尋ねると、色とりどりの天使たちは遥か彼方を見つめた。

    「あちらに、、、」

    更に宇宙の果ての更に果てに、その蒼い星はあった。
    恍惚とした蒼く光る星。
    神々しく、光る玉のようで宝石のようなその星は、独特な妖艶な美しさを放ってそこに存在していた。
    美しさの中には醜さがあり、それが相まって更に美しい星。
    陰と陽が存在する星。
    神秘的な星。
    火と水があり、光と闇がある星。
    そこからは全ての命が生まれ、そして亡くなり、新たに生まれ変わりを宿す星。
    そんな星は、全宇宙を探しても存在しない。
    唯一無二の存在。
    それが、天がひと際慈しんだ「蒼い星」であった。

    「美しい」

    「はい。あの蒼い星の美しさと神秘さがこの破壊の訳であるようです」

    「奪い合っていたのです」

    「全能の神々でさえ、あの蒼い星が欲しいのです。天が愛でられていたあの蒼い星が、、」


    と、随真神が言うと、ひれ伏した今にも消えてなくなりそうな4神が更にひれ伏した。
    神々は、もうエネルギーが尽きかけていた。
    姿も次第に無くなっていく。
    オーラが消える。
    エネルギーが尽きるということは、無くなることを意味する。
    つまりは、存在そのものの死だ。
    それは神々でも同じこと。
    しかも神々は消えてしまったらそこで終わる。
    もう一度生まれることはないのだ。
    それが神の運命。
    そう定めたのも「天」だった。

    「なぜあの蒼い星が欲しいのか?」

    と、天が聞いた。
    その言葉にほんの優しい労りの波動が混じっていた。
    その波動の威力は絶大で、消えかけていた神々のエネルギーやオーラが一気に復活した。
    星々で姿を形成する力も蘇った。

    銀河の姿となったゼウスが、大いなる大きな天の波動を受け取り、狂喜しそうな喜びを抑えるように答えた。
    神々は力のあるものが好きだった。
    しかも、天の放つ光は、それはそれは美しいのだ。

    「あれは、特別な星なので、、、」

    「特別とは?」

    「天が御作りになられ、愛でられた星を、欲しがらない神はいません」

    「それで宇宙が無くなっても、、?お前たちが消えても?」

    天の、天使の神々しい姿は、次第に巨大になっていく。
    波動を発している内に、元の大きさに戻りつつあった。
    遥か上層の階の宇宙の中心の、その中心の大きさに戻りつつある。
    ここで元の大きさに戻ったら、この宇宙は神々諸共無くなってしまう。
    でも、それでも先ほどまで蒼い星を奪い合い、戦っていた四神は、悔いはなかった。
    まさか、ここで天の姿を拝めるとは思っていなかった。
    これで消えてしまっても喜びしか残らない。
    それほど、天の存在を愛していた。
    神々は天の音や波動やその大きさに恋い焦がれていた。

    「このまま天自らの力によって、消えて無くなることが最高の喜び」

    「ならばその願いを叶えよう」

    天の発したその言葉の音が、復活した神々の姿を一瞬で消し去った。
    塵のように。
    蒸発する水滴のように。
    一瞬で何もなくなった。
    「間」もなかった。
    漆黒の宇宙には、神々の存在を示すエネルギーの欠片も残っていない。

    「天よ」

    随真神たちは、自分たちを守るのが精いっぱいだった。
    オーラを最強にする。
    そして一瞬で固くシールドを張ったが、間に合わない随真神は、同じように一瞬で無くなった。
    蒸発してしまった。

    「我の造りし宇宙を壊した罪は重い。
    だが、その蒼い星を欲しがる気持ちはわかる。あれは、我の分身のような星。蒼い美しい星」

    「天よ、では彼らの名をここに残してはいかがでしょうか?」

    小さな天使の姿をした、天の最も近い存在の位置にいる随真神が言った。
    このひと際眩しい光を放っている随真神の名は「如来」と言った。
    大きな存在に戻りつつある天は、天使から轟轟と燃える盛る巨大な灼熱の「太陽」という惑星に姿を変えた。
    もう天使の姿で自身の存在の大きさを維持するのは無理だった。
    随真神たちは、灼熱の巨大な惑星を前に、オーラを強化し、一斉にシールドを張ったが間に合わず、
    エネルギーが焼けて消失する随真神が大勢いる。
    それでも天のその炎で焼かれることが、彼らには何よりも喜びであった。

    「如来のいう通り、名だけはここに残そう。この小さな宇宙の最初の神々として、、、、、」

    そうして、ゼウス・ポセイドン・ハデスとクロノスの名が小さな宇宙の存在した最初の神々として名が残った。


    その小さな宇宙を「太陽系」と呼ぶのは、もっと先のことである。



    続く

     
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